幼少の頃から今に至るまで、これといって「これがクリスマスの思い出です」と胸を張って言えるような出来事は、実はあまりない。
特別なプレゼントや、忘れられないパーティーがあったわけでもないし、ドラマのワンシーンみたいな夜を過ごした記憶もない。

それでも不思議なもので、12月24日が近づくと、理由もなく少しソワソワしてしまう。
街の空気が少しだけ浮き足立っていて、イルミネーションがやけに優しく見えて、コンビニの音楽まで特別に感じる。
「今日はイブなんだな」と思うだけで、なんとなく一日が違って見える。

きっと、思い出があるかどうかじゃなくて、
“みんなが同じ夜を意識している”という感覚が、そうさせるのかもしれない。

何も起きなくてもいいし、特別な予定がなくてもいい。
それでもこの夜は、どこか落ち着かなくて、どこかあたたかい。

みなさん、どうぞ良いクリスマスを。
それぞれの場所で、それぞれのかたちの、静かでやさしい夜になりますように。